フクちゃん笑っていこうヨ

アルツハイマー型認知症の母を介護して

観劇ドキッ!

フクちゃんと楽しい時間を過ごせるように色々と計画を立てました。

 

美術館では、作品に感動して声が大きく出てしまって注意されたり、お花見ではあまりの人ごみに、花より人を見に来たようになったり、ミュージカルを見に行ったりしました。

 

ある時、劇場のある駅で待ち合わせをしようと、電車で向かっていると車内アナウンスがありました。「この時間から次の◎駅には止まりません」

◎駅で待ち合わせをしていた私はビックリ大慌てです。

少し早めに来ていたので、駅のホームで来る電車内のフクちゃんを探したり、待ち合わせの前後の駅を行ったり来たりしましたが、見つけられません。

フクちゃんから携帯電話が掛かってきました。でも、興奮していて私の声が聞こえなくなっています。「どうしよう!!」

仕方なく待ち合わせの駅のホームに行くと、フクちゃんを見つけました。

「どうやってきたの?」と尋ねると、知らない人に教えてもらって電車を乗り換えてやって来たとニコニコです。

 

観劇の時間にも間に合いました。華やかな舞台や衣装を見て喜んでいましたが、内容や声はあまり理解できていないようです。

 

無事に会えたので良かったですが、本当に冷や汗ものでした。

 

これ以降は長時間座っていることに眠気や疲れが出るようになりました。観劇に行くことも段々と遠ざかっていきました。

押し売り電話

一人暮らしになったときに不審な電話を取らないように、登録者名が大きく表示される電話に取り替えました。

でも、昔人間は表示を見るよりベルの回数3-5回で受話器を取らないと失礼に当たると思っています。

フクちゃんも、まったく表示を見ていませんでした。

色々な営業、売り込みなどの電話も取ってしまいます。

 

ある日の夜、フクちゃんからtorakoの家に電話がありました。

「明日、荷物が届くけど、17000円支払わないといけないけど、私そんなの頼んでないし、どうしよう、、、」SOSです。

 

孫のmaagoが翌朝フクちゃん宅へ行きました。宅配便の方に受け取り拒否することを伝えて持ち帰って頂きました。

15cm位の小さな箱に海産物7品で17000円って、一体何が入っていたのでしょうか。中を確認していないので分かりません。

取りあえずこれでひと安心です。この電話番号は着信拒否に登録しました。

 

数ヶ月後またフクちゃんから電話がありました。

「明日荷物が届くけど、今度は一人で断るから大丈夫」

その夜、フクちゃんは興奮しながら、武勇伝を語ります。

宅配便の方を物凄く怒鳴りまくって持ち帰って頂いたそうです。宅配便の方は何も悪くないのに、本当に申し訳ありませんでした。

 

これを数ヶ月毎に繰り返すことになります。電話番号もその都度着信拒否の登録をしていき、ついにその地域の市外局番も拒否、その次は携帯の電話へと変わりました。

いたちごっこです。

 

消費者センターに対処方法を尋ねると、「この家に電話を掛けてこないで!」と言うと掛けて来ないそうです。掛けると違法になるそうです。

 

でも、その電話を取るのはフクちゃんです。耳も遠くてよくわからずに返事をしてしまう彼女にこのセリフを正しく言えるかどうか、怪しいものです。

 

電話番号はネットで調べると、怪しい番号かどうか、すぐに分かります。

宅配便業者によっては受け取り拒否の手続きがあると思いますので、フクちゃんのようにご迷惑を掛けない方法を選んでください。

 

 

 

 

 

 

歯が抜けた!

若いときから虫歯がないことが自慢だったフクちゃんですが、認知症診断を受ける前から歯槽膿漏になっていました。歯茎にマッサージクリームを塗る事はしていました。

 

フクちゃんが、「ほら、歯が抜けたよ」と見せてくれました。知らないうちに何本も抜けていました。食べることが大好きなのに、これでは食べにくいでしょう。「入れ歯を作ったらどうだろう」とフクちゃんに尋ねると、作ってみたいということになりました。

 

本で評判の良い歯科医を見つけました。バスに乗っていくところにある医院ですが、一人でも行けそうなので予約をしました。

その際、認知症であり、家族が遠方のため付き添えないことをお伝えすると、先生からメールで通院と治療の様子を連絡して頂けることになりました。

 

なんて有難い事でしょう。今の時代だからこそです。

 

それからは、通院のたびに先生からメールが届き、治療の進み具合や本人の様子もよくわかり、安心しました。

 

無事にフクちゃんも満足な部分入れ歯が出来上がりました。

これで安心して美味しい食事が楽しめます。

 

全ての病院で出来ることでは有りません。お手間をおかけした先生やスタッフさんに本当に感謝いたします。

体のメンテナンス

ある時、フクちゃんが自分で足の爪を切っていると指まで切ってしまいました。

ポッチャリ体型のフクちゃんが、年齢とともに体の柔軟性がなくなり、足先まで手が届きにくくなっていたことに、全く気がつきませんでした。

 

この怪我がきっかけとなり、定期的に足の爪を切ってあげることにしました。手の爪は自分で切ります。

すると、今度はかかとのひび割れが気になりました。保湿クリームを塗るときれいになります。ついでに、マッサージをすると気持ちが良さそうです。

 

私もどんどんエスカレートしていき、頭皮から顔、肩、背中、腕、足と座ったままでほぼ全身をマッサージするようになります。

そして、リンパの流れを整えると、丸いお顔が、あら不思議!小顔になりました。鏡を見たフクちゃんもビックリしています。

 

ふくよかなお年寄りのお顔がべちゃーと見えるのは、太っているだけではなく、むくんでいるからだったのですね。

 

マッサージだけではなく、体操もします。

足の指でタオルをたぐり寄せたり、腕を回したり、優しいスクワットをしたり、顔の表情筋を動かしたり、腹式呼吸をしたり、辛くない体操を色々とやります。私はにわかインストラクターです。

 

ひとりの時間でやることがないと、ウトウトと居眠りをして同じ体勢でいることが多くなっていきます。

一緒にいるときに少しでも楽しいことや、体に良いことをすると、自然と笑顔が出てきますね。ついでに私もシェイプアップです。

 

 

物とられ妄想

認知症の代名詞のように言われている、「物とられ妄想」ですが、そうとは言い切れないこともありますよ。

 

ある時、フクちゃんが、「私の自転車が盗まれた!」と言って怒っています。

いつもの店の駐輪場を探しても見つかりません。鍵は家にあるので、乗っていった先で乗らずに帰ってきたのではないかと、私達は考えています。

新しい自転車を購入しました。フクちゃんは新しい自転車が気に入ったようです。

 

永年通っているカラオケ店で「財布を盗まれた!」とフクちゃんが言います。

財布にはクレジットカードが入っているので、カード会社に電話して止めてもらいました。警察には遺失物届を出しました。

カラオケ店の店主に話しを聞くと、当日は永年の友人はいなかったようで、フクちゃんは財布を持ってお会計をして、トイレに入った後、出てきたときに財布を持っていなかったかもしれない。その次にトイレに入った人はすぐに店を出て行ったそうです。

その人が持って行ったの?

 

これを機会にカラオケ店に行くのをやめてもらいました。

 

「物を取られた!」と言っても落ち着いて話しを聞くと、間違いや、勘違いであることは本人も分かります。本当に取られていることも有ります。

フクちゃんはお金を取られた事より、torakoがプレゼントした財布がなくなったのが悲しい、ショックだったようです。後日、一緒に新しい財布を買いに行きました。

 

認知症の人と接すると泥棒扱いされるから、関わりたくない、という方がおられますが、ちゃんと落ち着いて話しをすればわかってくれる事も有ります。

 

どうか先入観を持たないくださいね。認知症になる前の人格はそのまま残っています。ただ一部が出来なくなるだけです。少しずつその範囲が広がっていきますが、周りの人達がサポートと理解をするだけで、不安を減らして生きていけます。

だからこそ、smileです!笑っていこうヨ!

 

 

 

デイサービス選び

介護認定を受けると同時に、診察を受けた病院に併設されているデイサービスの通所を始めたフクちゃんです。

そこは、やや進行された方が多く通所されていました。

自分は認知症だと思っていないフクちゃんはすぐに不満を持ちました。

なんでこんな人たちと一緒にいないといけないの!

 

私より先にケアマネージャーさんが気が付きました。

そして、フクちゃんに合う所を色々と探してくれました。

 

新しく通うことになったのは、手工芸の先生が指導をして下さったり、その種類も多く、美術館見学、お花見、外食など外出することも頻繁に行われていました。比較的軽い介護度の方が多く通われている所でした。

 

フクちゃんはすぐにお友達もできて、とても楽しそうに通うことになります。

 

フクちゃんは少し疑問を持ちます。

外食してもお金を払わないこと。仲の良いお友達になったのに、外で会う約束をしようとしないこと。

確かに不思議だよね。今までのお稽古や趣味のサークルとは違います。その都度、笑顔で答えました。不安や心配を取り除く事が大事です。

 

デイサービスでは、フクちゃんのレベルに合わせて作品作りをさせて頂きました。3カ月掛けて作った木目込みの大作は、フクちゃんの大満足の自信作となりました。

 

入浴サービスは、化粧を落とすのがいや、人前で裸になるのがいや、というので利用しませんでした。しかし、進行していくと家での入浴回数が減ってきたため、お試しで入浴してみると気持ちが良かったようです。抵抗なく入浴サービスを利用するようになりました。

 

その他にも、運動マシーンを使った半日コースのデイサービスも利用しました。

こちらは、男性利用者が多く、会話が弾まないので、運動は好きだけれどあまり楽しくは無かったようです。

 

デイサービスの利用は、多くの利点が有りますが、送迎時や日中に本人の様子を確認して頂けて、異変があると、ケアマネージャーに連絡が行き、確認してから、私に連絡が来るという連携が、他県に住む私にはとても安心できました。

通所日以外でも、散歩中のフクちゃんを確認してもらえたり、沢山の目で見守られていると思うと安心です。

遠慮しないで~!

一人暮らしの備えとして、天井に付けた火災報知器ですが、買ったときに付いていた電池のまま設置したため、すぐにピーと電池切れの音が鳴りました。

こんな些細な事で、忙しいtorakoや弟君を呼びつけるのは申し訳ないとフクちゃんは思ったみたいです。毎週末にはどちらかが訪問しているのに。

 

新聞の折り込みチラシに入っていた、便利屋さんにフクちゃんは問い合わせの電話を掛けました。

すると、すぐに電池を交換してくれました。

とても感じの良い方で、何でも親切に対応してくれる彼にスッカリ気を許したフクちゃんは、事あるごとに便利屋さんを呼ぶようになります。

 

ある時、エアコンの音が気になり便利屋さんに来てもらいました。

 

このお金で新しいエアコンと交換してね!と依頼します。

 

もちろん親切な便利屋さんは、フクちゃんに依頼された通り、新しいお手頃なエアコンと交換してくれました。フクちゃんも大満足です。

 

でもね!そのエアコンは弟君が最新の高機能エアコンに取り替えて、まだ一年しかたってないよ!しかも、10年間の保証付きです。

 

慌てて弟君が、便利屋さんに問い合わせると、外したエアコンは売ってしまった後でした。

 

便利屋さんは良い人ばかりだと思いますが。

その後、フクちゃんには、便利屋さんを呼ばないようにと釘を刺しました。

 

フクちゃん、遠慮しないで私達に相談してね~!!